前立腺肥大症
膀胱のすぐ下で、尿道をとり囲むように前立腺は存在します。前立腺は精液を作っている臓器で、射精と排尿に関係しています。組織学的には30歳台から肥大が始まっていると言われ、80歳台では実に9割の方が前立腺肥大になることがわかっています。大きくなると尿道を圧迫して尿が出にくくなったり、尿が残った感じ、トイレが近い、尿が漏れてしまうなど、様々な症状を引き起こします。超音波検査、尿の勢いをみる検査(尿流残尿測定)、排尿日誌、腫瘍マーカー(PSA)などで診断しますが、当クリニックではフロースカイという最新の尿流測定機器を使用しています。治療は薬物療法が中心で、いくつかの薬を組み合わせて治療する場合もあります。現在の治療で改善効果を実感されない場合は、是非受診をお勧めします。内服治療でも尿閉(尿が詰まってしまう)を繰り返すような場合には、手術も検討します。
過活動膀胱
最近はテレビコマーシャルでも見かけるようになりましたが、突然くる我慢できない尿意(尿意切迫感)を主とする病気です。時に尿失禁や頻尿を伴うこともあり、生活の質(QOL)を著しく低下させてしまいます。男性女性の両方がなる病気ですが、特に女性では810万人が過活動膀胱で悩んでいると言われています。治療は薬物治療が中心となり、飲み合わせ・効果・副作用などを見ながら、薬の種類を相談します。なお、当クリニック院長は過活動膀胱のテーマで学位を取得しており、現在発売されている薬の開発にも尽力しているため、お困りの際はいつでもご相談いただければと存じます。
夜間頻尿
夜間1回以上トイレに起きることが夜間頻尿とされており、男性・女性どちらでも起こりえます。原因としては、膀胱容量の低下・過活動膀胱・前立腺肥大症はもちろんのこと、睡眠障害・心血管障害・脳血管障害・睡眠時無呼吸症候群などが原因となることもあり、内科的な治療が必要となることもあります。診断には、尿検査・超音波検査・尿流残尿測定検査に加えて、2,3日間の排尿日誌をつけていただき、その方の排尿状態を評価します。治療は、生活習慣の改善や膀胱訓練といった行動療法に加えて、数種類の薬剤を用いた薬物治療が中心となります。
神経因性膀胱
排尿は、脳から脊髄の神経を伝わって膀胱尿道へ命令が伝わりますが、その命令がうまく伝わらず障害がでてしまうことを、神経因性膀胱といいます。尿がでにくい・尿が詰まってしまうなどの排尿障害もあれば、尿が漏れてしまう・近くて困るといった蓄尿障害をきたすこともあります。脳梗塞・脊髄損傷・パーキンソン病・子宮癌手術・直腸癌手術・糖尿病・痴呆・加齢など原因は様々で、薬物治療が中心となります。ご自身で排尿ができない場合や残尿が多い場合は、カテーテルという管を用いることとなり、自己導尿(ご自身またはご家族が、その都度管を用いて尿を抜く)またはカテーテル留置(月に1回程度の定期交換が必要)を選択する場合があります。
尿失禁
主に腹圧がかかったときに漏れてしまう腹圧性尿失禁、過活動膀胱によっておこる切迫性尿失禁、二つが合わさった混合性尿失禁、膀胱に多量に尿がたまり溢れて漏れてしまう溢流性尿失禁の4つに分類されます。腹圧性尿失禁では骨盤底筋体操や手術、切迫性尿失禁では薬物治療が中心となります。
夜尿症
5歳を過ぎて週に2回以上の頻度で、少なくとも3ヶ月以上連続して夜間睡眠中に尿失禁を認める時、夜尿症と呼びます。5歳で約20%、小学校入学時約10%超にみられ、一般的には6歳以上が治療の対象となります。詳しい問診や診察の後に、排尿記録をつけてもらい、まずは夕食の塩分制限や就寝前2時間以内の飲水制限、就寝前の完全排尿を指導します。生活指導で改善しない場合は、抗利尿ホルモン剤(デスモプレシン)やアラーム療法の適応となります。